グラベルロードとマウンテンバイクの違いはどこ?
未舗装路での走行を想定しているという点で似ているように思えるグラベルロードとマウンテンバイク。しかし、設計思想や安全機構など両者は全く違う乗り物です。
更新日: 2023.10.11公開日: 2022.9.1
目次
設計思想が全く違うグラベルロードとマウンテンバイク
太いタイヤにディスクブレーキ、グラベルロードバイクとマウンテンバイクは似た部分が多いですが、実は設計思想から全く違う、別物のスポーツバイクです。グラベルロードバイクとマウンテンバイクの違いというよりかは、マウンテンバイクとその他の自転車の違いとも言えます。
マウンテンバイクが特殊な理由は「どんな道でも走破できる」という設計思想にあります。
マウンテンバイクは舗装路も問題なく走ることが出来ますが、ママチャリで崖を降るのは危険過ぎます。しかし、マウンテンバイクは、モデルによっては山岳の崖や雪の山を駆け降りるようなシーンでも使われます。
つまり、「走れる」という意味では、マウンテンバイクの方が圧倒的に対応できるシーンが多いのです。
グラベルロードバイクはマウンテンバイクに近い道を走ることが出来ますが、それはマウンテンバイクが走ることが出来る道の「一部」でしかありません。
スペック面でのグラベルロードとマウンテンバイクの違い
では具体的に両者のどこが違うのか、スペックから比較してみましょう。
大きな違いは、
- サスペンションの有無
- ハンドルの違い
- コンポの違い
- ブレーキの違い
の4つです。
サスペンションの有無で走れる道が変わる
マウンテンバイクの代名詞とも言えるのがサスペンション。マウンテンバイクの中でも種類があり、前後にサスペンションがある「フルサスペンション」と、フロントにだけサスペンションがある「ハードテイル」、そしてサスペンションがない「リジッド」の3つの種類があります。
グラベルロードバイクは、車体の仕組み的にはリジッド・マウンテンバイクに近い設計思想です。リジッド・マウンテンバイクは軽い未舗装路を走る前提のバイクです。
マウンテンバイクは、トレイルやダウンヒルなどのアドベンチャーライドを走ることを想定しているため、未舗装路の唐突な大きな段差や岩、木の根なども簡単に乗り越えるようにサスペンションが使われます。
グラベルロードバイクでもそうした道を走ることが出来ますが、マウンテンバイクは「トレイルやダウンヒルなどを高速で降る」シーンも想定しています。
こうした場所ではサスペンションがないと車体が跳ねてしまい、大落車の危険があります。山道などは体に刺さる岩や木がたくさんあるため、命の危険もあるのです。
ハンドルの違いは危険度の違い
グラベルロードバイクはあくまでロードバイクの一種なので、ハンドルはドロップハンドルを採用しています。ドロップハンドルは、前傾姿勢を取りやすく、空気抵抗を減らして少ないエネルギーで走行できるのが特徴です。
一方で、マウンテンバイクは普通に考えたら長すぎるくらいのフラットバーハンドルを採用します。これは、マウンテンバイクがサスペンションだけでなく、膝や肘も使って衝撃吸収をするためで、横に広いハンドルにすることで、肩に負担をかけずに肘をサスペンションのように使うことが出来ます。
また、マウンテンバイクはポジンションもアップライトで前傾姿勢にならないようになっています。これはダウンヒルなどで前傾姿勢をするとブレーキに力を握りづらくなるだけでなく、前のめりでの転倒を避けるという狙いがあります。
高速で荒れた道を走るダウンヒルでは、ブレーキングミスと前のめりでの転倒は命の危険に関わる事故に繋がります。
このように、ハンドル一つをとっても、グラベルロードバイクとマウンテンバイクは大きく違うことがわかります。
コンポの違いで登れる坂が変わってくる
走る道が違えば、コンポーネントの設計思想も違ってきます。
ロードバイク向けのコンポーネントは「道に合わせて適切なギア比を選び、なるべく省エネで高速走る」ことを前提に、コンポーネントが設計されています。ですので、ギア比が5倍近い「53-11T」などのギア比があります。
一方で、マウンテンバイクは速度を出すのはダウンヒルがメインで、基本は下りなので自然と速度が出ます。ですから、ロードバイクのようなギア比の大きい組み合わせは使うシーンがあまりありません。
逆に、マウンテンバイクでは20%を超えるような勾配の登りの泥道や、岩肌を乗り越えることがあるために、ギア比が0.6程度のロードバイクで考えたらとてつもなく軽いギアが用意されています。
コンポーネントはマウンテンバイク向けとロードバイク向けで互換性がないことが多いため、どちらを選ぶかでコンポーネント的にもどちらを走るかが決まってしまうのです。
ブレーキの違いは制動力の違いになる
グラベルロードバイクもマウンテンバイクも、どちらもディスクブレーキを搭載することがほとんどですが、ディスクブレーキ自体も違いがあります。
まずグラベルロードバイクは、フラットマウントというタイプのブレーキが取り付けられますが、フラットマウントのディスクブレーキは構造的に160mmローターまでしか対応出来ません。
一方で、マウンテンバイクでは舗装路では考えられないような急激な下りでもしっかりと止めるように、180mmや200mm以上の大きなローターを採用します。そのため、ブレーキマウントも「ポストマウント」という規格が採用されます。
グラベルロードバイクでは「160mmローターでもロックしてしまうほど制動力が高い」と言われますが、マウンテンバイクの場合、コースによっては「急ブレーキ、急加速」を繰り返すことも多々あり、「止まりすぎる」くらいでないと危険なこともあるのです。
マウンテンバイクが走る道はマウンテンバイクで走ろう
ここまで見て来た通り、マウンテンバイクが想定するのはハードで危険なコースです。マウンテンバイクは、設計からパーツまでしっかりと安全機構を取り入れているからこそ、危険な道も走ることができるのです。
ロードバイクみたいな自転車を「ルック車」ということがありますが、実はこれは語源的にはマウンテンバイクが発祥です。
命の危険性があるようなマウンテンバイクレースに、きちんとした安全機構を取り入れていない、「見た目はマウンテンバイク風」の格安自転車で参加することがあり、業界的に「自転車メーカーが悪路走行を想定しないが、見た目(ルック)はマウンテンバイク」での出場を禁止したことが発端です。
安いクロスバイクなどで「未舗装路では走行しないこと」というステッカーが貼られていることがありますが、これはそうした道を走行すると事故に遭ったり、バイク自体が破壊されてしまうリスクがあるためです。
これはグラベルロードバイクでも同じで、「悪路でも走ることが出来るから」と言ってマウンテンバイクパークの上級者コースにグラベルロードで挑むのは危険です(パーク側からNGが出ることがほとんどでしょう)。
グラベルロードバイクは、あくまで勾配の少ない砂利道や泥道を走行することを前提としていますから、そうした道を走るようにしましょう。
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